教科書を正確に読むことの重要性  (菅田先生)

今年から中学生の教科書が変わりました。今回の教科書改訂により、どの教科においても日常生活や身近な事柄を題材にしていることが多くなりました。数学では、ジェットコースターの進む速さを題材にしてy=ax² (2次関数) の導入をしている教科書もあります。教科の勉強を日常的な場面とのつながりを意識したつくりとなっている印象です。

 

昨年、小学生の教科書改訂、今年、中学校の教科書改訂、そして、来年度からは高校生の教科書も変わります。こちらは教科名が大幅に変更されます。改めて学校の先生方や、塾や予備校の先生方が対応に追われることになると思われます。

 

昨今の教育改革において、どの学年の教科書においても文章量が多くなっております。そこから必要な情報を正確に読み取り、自身の見分を広めていきながら、問題を解くための解き方を学んでいくことになります。これは、文章読解の必要な国語や英語に限らず、どの教科でも言えることです。

 

 

そのような状況の中、今年の4月から新しい教科書をもとに小中学生の指導をしてきましたが、私自身が担当することの多い算数や数学においても読む量が増えているような印象です。また、中学生の定期試験などで問われる内容も、今まで以上に細部まで目を通しておく必要があるように感じます (例えば、1次方程式を解く際に、どのような解き方で解き進めたかを答えさせる問題が出題されることがありました) 。それだけ、これまで以上に教科書内容や演習中の問題文などを正確に読めているかが重要であると感じます。これは中学生以上の生徒はもちろんのこと、小学生にも言えることです。

 

小学校で学ぶ「速さ」の単元を利用して、現在の小中学生の中で見られる読み間違いの例を挙げたいと思います。「速さ」の単元は、基礎問題であれば「速さ」「時間」「道のり (距離) 」の関係を読み取ることで、すぐに計算をすることが可能です。

 

その上で、生徒たちがミスをしてしまいがちなのは、「単位」を見落としてしまうことです。

 

例題) 2.6kmを40秒で進む新幹線の速さは、秒速何mですか。

 

この問題は、新幹線で進む「道のり」である2.6kmを40秒の「時間」で進むことから「速さ」を求めていく問題です。「速さ」は下記の計算方法で求められます。

 

「速さ」=「道のり」÷「時間」

 

 

この公式を利用すれば、2.6km ÷ 40秒 = 0.065km と答えられます。そこから、0.065kmを65mに単位を言い換えることで、「秒速65m」となり、正解となります。

 

 

ここで、文章を正確に細部まで読めていない生徒の場合、どのような状況になりうるのかをお話しします。

 

 

まず、数字ばかりに目が行くため、2.6 ÷ 40 = 0.065 の計算をして、答えを「秒速0.065km」と答えるパターン。最後の「m (メートル) 」を読めていないことが原因で間違えてしまっているため、そこを修正はするように生徒に指導します。

 

また、0.065まで求められたため「秒速0.065m」と答えてしまうパターン。よく考えればだいぶゆっくり走っている新幹線であることに気付いてほしいのですが、問題文の最後が「秒速何mか」となっていることがなまじ読めているために、このような書き方をしてしまうのです。この場合、最初の2.6kmの「km」を見落としてしまっている可能性もあります。

 

 

このような傾向が当てはまらず、しっかりと「秒速65m」と解くことの出来る生徒はもちろんいます。その上で、上記のように間違えてしまう生徒もいます。これは一部の生徒に限った話ではなく、同じような学年の生徒の中でも珍しいことではありません。

 

 

ある意味、算数は計算をすることがメインとなるため、数字を見て計算し、答えが出せれば満足してしまう生徒が多い印象です。国語のように読むことが前提となっている教科であればまだしも、算数においても問題文を正確に読むことが重要なことを改めて理解してほしいと思います。

 

 

また、このように細部まで読むことを苦手としたまま中学生になると、勉強の様々な面で苦労している様子が伺えます。中学生の数学は、学年が上がれば上がるほど、文章量が増え、情報をいかに整理できるかが重要になります。特に、方程式の単元では、その文章量の多さから解くことに拒絶反応を示してしまう生徒もいます。

 

例題) 1個150円のカレーパンと1個120円のクリームパンを合わせて2,400円分買いに行った。実際には、個数をとりちがえて買ったので、予定より60円多くかかった。予定していたカレーパンとクリームパンの個数をそれぞれ求めなさい。

(解答:カレーパン8個、クリームパン10個)

 

この例題は、連立方程式を利用して解く問題です。解き方は省きますが、102文字読んでから問題を解くことになります。この文字数は、連立方程式の利用の問題において平均か、それより少し長い文章量です。ここから問題を解くための情報を読み取り、問題を解く必要があります。「個数をとりちがえて買った」ことや「予定より60円多くかかった」ことがポイントになり、そこを正確に読み取れるかが重要です。これらを読み取ることに苦労し質問してくる生徒が今までも多く存在し、そのたびに問題文を整理して読み解く力が必要だと思わされます。

 

上記2つの例題を踏まえ、文章を正確に読むことを改めて重視してほしいと思います。基礎的な読解力が身についていないと「偏差値の高い高校には入れない」と述べている研究結果もあります (注:新井紀子著 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 東洋経済新報社 2018年発行) 。必ずしも全ての生徒に言えることではありませんが、文章を正確に読むことが重要であることは確かです。それも、教科書を正確に読むことができるかどうかの段階でも言えることです。改めて、教科に限らず文章を正確に読む力を養ってほしいと思います。私としてもこれらのことを心がけて指導していきたいと思います。

 

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