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当塾は、主に世田谷区や目黒区の生徒を指導しています。近隣の中学校に通う生徒が幸いにも数多く通っており、毎年、何人もの受験生を送り出すことができています。その経験と現在の中学校の状況を客観的に見たときに、現状の中学生は、とても内申点の確保が難しくなっていると感じられます。今年から中学校の教科書が全面改訂されたことも併せて、定期試験の難化や内申の評価基準の変更などもあり、学校の先生方も試行錯誤しながらの成績評価になっていることが予想されます。そのため、内申点のつけ方が難しくなっているように思います。
これは私自身が感じていることではありますが、5段階評価の「3」を受け取る生徒の範囲がとても広いように思います。現在の中学校の成績は絶対評価でつけられております。そのため、学校の先生方の評価基準によって、内申点が決定されています。その上で、5段階評価の「4」以上を取ることは非常に困難で、「5」を取得することができるのは成績上位者の中でも小数のように感じます。定期試験で中間・期末ともに90点以上、提出物も全て提出し評価も高く、かつ授業に向かう態度も良いとされる生徒がようやく「5」を取れるかどうか、と感じます。定期試験で80点台を取ったとしても「4」を取れるかどうかは提出物や授業態度次第と言えます。学校の先生方も多忙な業務の中、生徒1人1人の評価をつけていくことの大変さをとても感じますが、勉強面の実力の高さを感じる生徒でも、内申点の確保は困難なようです。
反面、評定「1」を受け取る生徒はごくわずかしかいません。ここ数年において、近隣の中学校に通っている生徒の中で「1」を受け取っている生徒はほとんど見受けられません。残念ながら定期試験の結果が思わしくなく、提出物などもあまり出せていないことで「2」を取ってしまう生徒は時よりいますが、「1」を受け取ってしまう生徒は現在ほとんど見ていません。
そのこともあるのか、現在、私立高校の偏差値帯の低い高校の中で、学校改革を進めている高校が増えてきております。特に、女子校や男子校が共学化し、進学校化することが増えております。今回、2つの学校を例に上げてお話しします。
品川翔栄高校は、2020年度より前身の小野学園女子高校から校名が変わり、女子校から共学校へと変わりました。また、「理数選抜コース」や「国際教養コース」などのコースが新設され、国公立大学への進学を視野に入れたカリキュラムが組まれることになりました。今年の春の2021年度入試では、入学者数が激増したため、2022年度入試の難化が予想されています。様々な要因があってのことですが、2017年度の「進学コース」の単願推薦入試の基準が、3科6点または5科10点または9科20点であり、「特別進学コース」で3科9点または5科15点でした。
しかし、2022年度入試からは「総合進学コース」の5科16点が最も低い内申基準となりました。単願推薦入試においてオール2程度でも出願できた学校でしたが、現在はオール3以上の成績が必要となります。今後、人気と実績が伴うようになれば、更に内申基準が上がることも予想されます。
また、自由が丘学園高校は、2023年度から男子校から共学校に変わります。それに先立ち、「ILA国際教養コース」や「STEAM理数コース」が新設され、現存する「プログレスコース」と併せて、国際交流や高大連携授業なども積極的に取り入れられた授業が展開されていく学校になっていくようです。また、現存する「フロンティアコース」の廃止も決まりました。2021年度の単願推薦入試における「フロンティアコース」内の「総合進学コース」で5科14点または9科25点が最も低い基準でしたが、2022年度入試から「フロンティアコース」の入試がなくなり、「アカデミックコース」にて5科16点または9科27点が最も低い基準となりました。単願推薦入試において、内申点がオール3以上であることが条件となりました。微増ではあるものの、こちらも今後の状況によってはより高い内申点を求められることになるかもしれません。なお、上述した「ILA国際教養コース」と「STEAM理数コース」の単願推薦入試の基準は5科18点または9科32点、「プログレスコース」は5科21点または9科37点となっております。
- 上記2校の詳しい受験情報は、各学校のHPや説明会にてお問い合わせください。
・品川翔栄高校HP https://www.shinagawa-shouei.ac.jp/jhhs/
・自由が丘学園高校HP https://www.jiyugaoka.ed.jp/
いずれにしても、「4」以上の内申点を確保していくことは、現在の中学生にとってなかなか難しいことになっていると感じます。その上で、独自の改革を行う学校が増えていることも事実であり、今後、更に高校受験に向けた対策が難しくなっていくことが予想されます。現在、中学生や小学生の生徒の皆さんには、できることから入試に向けた準備を進めてほしいと思います。もちろん、今回は私立高校を取り上げたので、都立高校の入試や通信制高校の状況なども見ていく必要があると思います。その上で、教育現場における様々な状況が年々目まぐるしく変わっていることを、当塾で教師をしている私自身もとても実感します。入試は情報を整理しておくことがとても重要だと思います。1人でも多くの子供たちが満足いく入試を迎えられることを願っております。